Positive Deviance(ポジティブな逸脱)No 16

事例18 介護施設でのポジティブデビアンス
Lisle 2024.02.11
誰でも

  今回のキーワードは、「マニュアルからガイドライン」です。      

マニュアルとは、 「誰がいつどのような作業をどれだけ行う」というように具体的なものであり、結果のレベルとともに量をはっきり指し示すもの。

ガイドラインとは、法律やルールなどを守るための「指針や指標、方向性」です。また、適正化するために留意すべき基準とされるように、「物事の判断基準」という意味もある。

例えば、マニュアルは「塩小さじ1を加える」と具体的に指示する内容であれば、ガイドラインは、「健康のためには、塩分は控えめに加えるのが望ましい」という内容になる。ガイドラインは、MUST要件(必須要件)とWANT要件(望ましい)に区分し、細かなオペレーションのやり方は、個々に任せる。

 一般的に、日本人は、マニュアルを金科玉条のごとく守る意識が強く、手先のオペレーションのやり方を固定してしまう。ワーカーをロボットのように効率化を求めるのであればマニュアルでも良いが、ホワイトカラーのようにクリエイティブな発想・行動を求めるのであれば、ガイドラインが適当であろう。日本人は、ブルーカラーの生産性が高いが、ホワイトカラーの生産性が低い理由の一つである。

介護施設の事例

以前:マニュアル重視【いままでの新人スタッフへのOJT】

一律に適応される業務マニュアルは、本部から命令が来るので、現場は、やり方が合わなくてもマニュアル通りの対応を求められる。

1. マニュアルを覚えてもらって、OJTで「やり方」の指示を受ける

2. マニュアル通りの業務だと、介護者からのご要望への対応は難しい

3. 介護者との交渉(マニュアル外の要求)に時間がかかり、介護者の満足度が低下する

改善:ガイドライン重視【これからの新人スタッフとのAAR*で「背景や目的、理由」を学ぶ】

*AAR-After Action Review -指導者と他のスタッフと共に情報共有ワークショップなどを実施

1. ガイドラインに沿って、行動後、AAR*で「背景・目的、理由」及び他のケーススタディを共有

2. ガイドラインに示されたMUST要件は守りながら、介護者からのご要望に臨機応変に対応

3. 介護者からのご要望に時間を使うことができ、介護者からの満足度が向上する

「バイスティックの7原則」

  介護者と援助者間の「信頼関係(ラポール)」を構築するための倫理と行動の原則。
対人援助において、より良い関係を築くための行動規範としてまとめられた。現在では介護職でも活用されており、介護福祉士の国家試験でも出題され、重要な考え方であると認識されています。また、対人援助に関係する保育士やその他の福祉職、医師や教師といった職業でも活かされている。

マニュアル重視のスタッフであると、下記の項目のほとんどが対応できないことになるが、ガイドライン重視のスタッフ(ポジティブデビアンス)であれば、下記の項目の対応が可能となる。

1. 個別化

「個別化」とは、お客様様が抱えるお悩みや課題、困難な状況は、先入観や偏見にとらわれず個別の問題として関わるべきという考え方

2. 受容

「受容」とは、お客様の考え、感情をありのままを受け入れるということ

3. 意図的な感情表出

「意図的な感情表現」とは、お客様の自由な感情表現を認める考え方

4. 統制された情緒的関与

「統制された情緒的関与」とは、援助者が感情に飲み込まれることなく、感情をコントロールして関わる必要があるということ。

5. 非審判的態度

「非審判的態度」とは、お客様の行動や考えについて「援助者が善悪の判断をしない」ということ。

6. 自己決定

「自己決定」とは、どのような選択をするかはごお客様自身に決定権があるということ。

7. 秘密保持

「秘密保持」は、お客様の個人情報などを外部に漏らしてはいけないということ。

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